2006年7月、中国の医療支援ボランティア団体からの要請を受け、Dr.HONDAが中国北部の都市、延吉(ヨンギル)を訪問しました。
経済成長が著しい国、中国。TVやマスコミでは上海など大都会での高層ビル群をはじめ先進国と変わらない設備などが連日取り上げられています。しかし、一方で地方での人々の生活は見えていないのが現実です。
今回の延吉訪問でDr.HONDAが目にした中国地方都市の歯科事情とは?また、歯科事情から見えた人々の暮らしぶりとは?
3回にわたりレポートします!

 

 


延吉市(「延吉」は中国語で「イェンチー」、朝鮮語で「ヨンギル」、日本語で「えんきち」)は中国北部に位置し、朝鮮民主主義人民共和国およびロシア両国との国境に近いところにあります。吉林省延辺朝鮮族自治州の州都であり、この地域の政治経済の中枢となっています。
※ 吉林省延辺朝鮮族自治州
1952年9月3日に成立した自治州。国境が近いため、朝鮮民主主義人民共和国出身者やその子孫が多く、人口の半分以上を朝鮮族が占めているのが特色。その他漢族をはじめ約18の民族が暮らしています。



お店の看板や標識は中国語とハングルの両方で表示。2カ国語併記が法律で義務づけられている。最近は韓国との交流が盛んなため、韓国文化の影響が大きい。

 

 


さて、延吉市での歯科治療はどのようになっているのでしょうか?日本の歯科医療制度との違いはあるのでしょうか?Dr.HONDAが現地歯科医師会のメンバーと面会し、現状についての報告を受けました。



延吉では、虫歯治療に加え、インプラントや矯正なども診療を行っています。まずは治療費についてみていきましょう。


 

 


原因の一つとして中国の健康保険制度が未整備なことが挙げられます。公務員は国の保険に加入していますが、企業や個人経営の場合は独自に保険加入をしなければいけません。さらに一般の農家の人々は保険がありません。したがって、中国では実質、歯科治療は自由診療となっており、治療費が高くなってしまうのです。

保険制度は大都市では整備されているようですが、延吉のような地方都市ではまだまだこれからのようです。ある医師の話では、あと5年ほどすれば制度も整えられていくだろうとのこと。それまで治療費問題は続きそうです。



ある歯科医院では日本と同水準の治療技術が受けられるが、別のところでは設備さえもままならない・・・このように、中国では医院によって技術に大きな差があります。あなたが中国で歯医者さんに行かなければならないとしたら・・・怖い気がしませんか?これは、歯科医制度の曖昧さが原因となっているのです。


 


中国で歯科医に従事している人々の経歴は多種多様。歯科大学の制度でさえも地域によって異なります。
同吉林省・延辺市内にある延辺大学では、歯科大学は5年制。卒業後1年して歯科医師試験を受け、資格を取ります。一方、延辺衛生学校というところでは3年制。3年制では1年後VICE DDSという助手を経てから3年後に試験を受けて資格を取得します。北京や上海など大都市では7年制の歯科大学も。また、違法ではありますが、技工士や衛生士が歯科治療をしたり、軍の医療部隊経験者が治療をしているところもあるそうです。
制度自体がこれほど統一されていなければ治療技術に開きがでてしまうのも仕方がないですね。今後制度が統一に向かうのか、それともさらに格差が起こるのか。歯科医制度の将来が注目されます。

※ 延辺大学では日本からの留学生も受け入れています。 延辺大学日本語HP
http://www.china.co.jp/jilin/yanbian-u/index.html

 



医療制度や歯科医制度など、日本とは非常に異なる中国歯科事情の一面が垣間見られました。
次回は中国/地方都市に住む人々のオーラルケア意識に迫ります。