前回は中国北部の地方都市、延吉市での歯科事情について取り上げましたが、実際に現地の人々はその中でどのように生活しているのでしょうか?
今回は延吉市民のオーラルケアに対する意識についてレポートします。

 

 


延吉市では中国といえどもあらゆるものにハングルと中国語を併記。朝鮮語が飛び交い、街中にはレストランやカラオケなどのお店もあります。

市民は朝鮮民主主義人民共和国出身者やその子孫が多く、人口の半分以上を朝鮮族が占め、約40%は漢民族、そして少数民族が生活しています。
民族により習慣の違いはあるものの、基本的に水資源が少ない大陸文化であるため、お風呂に入る習慣がありません。ホテルでもシャワー設備が万全でないところが多いようです。





日本人が延吉に行くと、カルチャーショックを受けることは必至。しかし世界的に見れば、日本人ほど毎日たっぷりと浴槽に湯を張りお風呂に入る国民はいませんから、日本人と比べることはナンセンスかもしれませんね。

したがって、現地の人々に会うと独特の体臭を感じます。中には髪を洗うことはおろか服も洗濯する習慣のない人もいるそうです。



 

 


延吉市内では、歯ブラシや歯磨き粉など、オーラルケア商品が市販されています。歯ブラシを使って歯を磨く習慣はもともとなかったようですが、次第に定着してきています。歯磨きをするタイミングは、当初朝と夜の一日2回でしたが、最近は韓国の影響を受け、「新しい文化」として食後に歯磨きをする人が多くなっているようです。韓国文化の影響は、カラオケやファッションだけでなく、歯磨き習慣にも及んでいるのですね。



一般的な市民の間では歯磨きをする習慣が定着しても、残念ながら虫歯や歯周病が改善されていないようです。なぜなら、前回取り上げたように、歯科での治療は自由診療。治療費が高く充分な治療や予防を受けることができないため、もともとの口腔内環境がよくないからです。また、治療費が高いため、すぐに治療をするという意識が低いことも考えられます。治療すべきところを放っておいたまま、いくら歯磨きをしても効果はありません。歯科での根本的な治療が必要なのに、気軽に行ける制度(保険制度)が整っていないのが現実なのです。
したがって、富裕層をのぞき、一般の人にとって歯科は身近な存在とは言いにくいようです。

 

 


治療費が高く歯科医院に行けない・・・そんな人のために、ボランティア団体が治療にあたっています。設備は一般のマンションの一室などを使用しているため万全とは言えないかもしれませんが、治療費は無料。大勢の人々が利用しておりいつも治療を待つ人で混み合っています。
今回、Dr.HONDAはボランティア団体を視察し、治療活動に参加しました。


 


中国の完備されていない健康保険制度が引き起こすもの。それは、「裕福な人は充分な治療を受けられるが、そうでない人は治療を受けることができない」ということです。よってお金がある人だけが健康を維持できるという不平等が発生してしまいます。
日本であれば保険診療と自由診療が選択でき、国民は費用に応じて治療内容を選択できます。健康保険制度の重要性を改めて感じますね。

 



歯科治療を受けにくい中国の環境を考えると、歯科での治療や定期的なケアが簡単に受けられる日本のありがたさが感じられますね。
さて、次回は延吉市民の口臭に対する意識に焦点をあてます。日本人と異なる習慣をもつ中国人はどのように口臭を感じているのでしょうか?お楽しみに!